りぼんの読書ノート

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百年の孤独(ガブリエル・ガルシア=マルケス)

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マジック・リアリズム」という言葉はこの作品から生まれました。1967年に発表され、20世紀の世界文学のあり方を一変させた大傑作です。ホセ・アルカディオ・ブエンディアと妻ウルスラを始祖とする一族が、蜃気楼の村マコンドを創設し、隆盛を迎えながらもやがて滅亡するまでの1世紀を綴った物語。

ひとつひとつのエピソードが、あまりにも濃厚なのです。錬金術。伝染性の不眠症。繰り返される戦争。闘鶏。金細工の魚。小町娘の昇天。黄色い蛾。バナナ工場の大虐殺。4年11カ月振り続けた雨。そして豚の尻尾・・。

7世代に渡る物語ですが、もれなくアルカディオかアウレリャノという名を持ち、早々と現世の営みから遠ざかり、亡霊のようになって戻ってくる男たちと対照的に、始祖ウルスラと妖女ピラル・テルネラは、二柱の女神のように物語全体を通して存在感を示し続けるだけでなく、後代の妻たちにも特徴が引き継がれていきます。ウルスラの秩序性はフェルナンダに、献身性はサンタ・ソフィアに分れて継承され、奔放なピラル・テルネラの系列に連なるのは、豊饒の女神となったペトラ・コテス。

時は少しも流れず、ただ堂々巡りをしているだけのように思えてきます。それもそのはず。ホセ・アルカディオから家族の一員のように遇された錬金術師のメルキアデスは、百年間に起こる出来事を全て見通していたというのですから。

かくしてメルキアデスの予言は実現し、マコンドと一族は消滅せざるを得ません。「この一族の最初の者は樹につながれ、最後の者は蟻のむさぼるところとなる」しかも滅びをもたらしたものが「この百年での始めての愛」などと聞かされると、悪夢に入り込んだような気分にさせられてしまいます。

そして読者は、マコンドという悪夢が現実味を帯びてくるに連れて、日常の意味をあらためて問い質さざるを得ない杜子春的な悩みに引きずり込まれてしまうのです。

2011/9再読