りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ブラックライト(スティーヴン・ハンター)

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「ボブ・リー・スワガー」サーガの前半3部作で、『極大射程』狩りのときを繋ぐ本書を読む機会がなかったのは、なぜか図書館になかったから。震災で浦安の図書館が長期クローズしていた間、勤務地の図書館を利用した際に見つけて手に取りました。

『極大射程』の事件で国家的陰謀に対峙することになったものの、妻と4歳の娘とともにアリゾナ州の田舎で平穏に暮らしている、ベトナム戦争時の名スナイパー・ボブを訪れてきたのは、ラス・ビューティという小説家志望の見知らぬ青年。ラスは意外にも、『極大射程』の事件で有名になったボブではなくて、亡き父親アールの人生を書きたいと申し出ます。

実はボブとラスには共通点がありました。警察官であったアールは40年前に逃走中の凶悪犯との銃撃戦で殉職していますが、やはり警察官だったラスの父親はアールの殺害犯とされる男の息子を銃殺したことから、人生を狂わせていたんですね。これは番外の『ダーティ・ホワイト・ボーイズ』の物語。

亡父の思い出と向き合う決意をしてラスの申し出を受けたボブは、当時の調書を読んで疑問を感じます。父を殺したのは不良凶悪犯ではなく、スナイパーの銃弾ではないのか?一方で、真相が明るみに出ることを恐れる勢力が2人を狙って動き出し、ボブを死闘に巻き込んでいくのでした・・。

アールが死の直前に関わった黒人少女殺害事件の顛末が、当時の事件を解明する鍵となるのですが、このあたりは、ストーリー的な面白さだけでなく、公民権運動以前の南部諸州の社会的風土とその後の変化を率直にあらわしてくれてもいます。

「ブラックライト」とは当時開発されたばかりの赤外線暗視スコープのこと。ボブに対峙する悪役スナイパーが用いる武器ですけど、「暗闇の中で目標を照らし出す見えない光」なんて、真相を求めて暗中模索するボブにふさわしいタイトルのように思えます。

2011/7