りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

七人の敵がいる(加納朋子)

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育児と仕事を何とか両立してきた陽子ですが、息子の小学校入学とともにはじまったPTA、学童父母怪会、地域子供会などの活動に悲鳴をあげてしまいます。めちゃくちゃ楽しい、ワーキング・マザーのPTA奮戦記ですが、楽しく書かれてはいても、かなりの部分が「現実」なのでしょう。特に「夫族」に読んで欲しい本です。

第1章:女は女の敵である
初のPTA会議は役員決めの修羅場になってしまいます。空気を読めずに正論を吐いた陽子はたちまち全員を敵に回して・・。専業主婦と兼業主婦の溝は埋まらないもの?

第2章:義母義家族は敵である
仕事と育児の両立に義母のサポートは欠かせません。でも「孫のため」の影の本音は不満だらけ。「陽子さんは、いつになったらお仕事をやめてくださるんでしょうね・・」

第3章:男もたいがい、敵である 
妙に張り切る男性役員の「理想」を正面から論破してしまったら、恨まれますよね~。これは会社でも一緒です。男社会では男を立てながら上手に賢く。でも至難です。

第4章:当然夫も敵である
夫に自治会の会合に出てもらったら、なんと会長を引き受けてきてしまいました。自分ではやる気ないのに・・。この夫、平均よりは遥かに理解があるんですけどね。

第5章:我が子だろうが敵になる
4年生になってサッカー少年団に入りたいと言い出した息子。「末はJリーガー」との甘い夢は瞬時に吹き飛びます。スポーツ少年団の父兄は、それを専業にしないと無理!

第6章:先生が敵である
PTAでほとんど全員に嫌われた陽子の仲間はダメママばかり。その1人が陽子にすがり付いてきます。娘が先生に色目を使われている!さすがに放置できません。

第7章:会長様は敵である
誰に嫌われても理論では負けない陽子の前に、全く異なる思想を持った手強い論敵が現れます。PTA会長は、難病の娘のために全てを犠牲にした元キャリアだったのです。果たして2人の対決のゆくえは・・。

実はここにあげられている「敵」は、誰も「本当の敵」ではありません。変えなくてはならないのは、旧態依然としたシステムそのものなのでしょう。そして、機能不全寸前の古いシステムを延命させている、圧倒的多数の沈黙。

重いテーマを楽しい読み物としながら、加えてハートウォームに仕上げた加納さん。目の離せない作家になってきたように思います。

2010/10