りぼんの読書ノート

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史記武帝紀3(北方謙三)

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16歳で即位した武帝も40歳となり、彼の治世はピークを迎えようとしています。彗星の如く現れた若き将軍・霍去病は匈奴を破って、張騫がもたらした西域への道を開き、大将軍・衛青との共同作戦で、匈奴を漠北の地へと追いやります。武帝の幼馴染であり、今は国家財政の専門家となった桑弘洋は、戦費調達のために塩鉄専売制を編み出します。

守戦を得意としていた李広将軍が老いを押して出陣した最後の闘いで、道を誤ったために戦闘に間に合わなかったことを恥じて自決したことも、武帝の謀略に協力してきた張湯が、弾劾を受けて自裁したことも、「家臣を使い切った」だけのことであり、武帝の自信を揺るがすものではありません。

ただし、治世後半の悪政への兆しも現れてきたようです。転換点は、若き霍去病の突然死だったのかもしれません。国家を自分の意思のみで動かしているとの強大な自信が、身体の衰えに対して過敏反応を起こさせたのでしょうか。始皇帝と同様に、不老不死を願う気持ちが芽生えてきます。

一方で再度西域を訪れた張騫は、汗血馬とインドの情報をもたらし、越南経由でインドへと至る道を開こうとの新たな思いも生まれてきます。朝鮮半島への進出を含めて、領土的なピークは、まだまだこれからなのですから。

李広将軍の孫である李陵少年は非凡な才能を示し、友人の蘇武も登場。匈奴は漠北の地で力をたくわえ、再度の南下を目論んでいます。宮中に職を得た司馬遷は、道理のみを説く鬱陶しい存在のようです。武帝時代の後半を飾る主人公たちも物語に登場してきました。物語が佳境に入っていくのは、まだまだこれからです。

2010/9