りぼんの読書ノート

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天海の秘宝(夢枕獏)

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著者は「傑作」と自評していますが、もともときっちりした「ハードSF」を書く方ではありませんので、矛盾が目についてしまいます。最後まで「奇想ファンタジー」として仕上げたほうが良かったのではないかと思いますが、まず、この発想があって生まれた小説なのでしょうから仕方ありません。SFと言ってしまいましたが、これ以上のネタバレはやめておきましょう。

宝暦年間の江戸に「不知火」を名乗る凶盗一味が跋扈し、「宮本武蔵」を名乗る辻斬りが現われ、人語を話す黒犬が人を襲うという不思議な事件が頻発し、背後には「大黒天」と名乗る不思議な人物がいるのです。本所深川に住み、奇妙なからくりを作って子どもたちから慕われている堀河吉右衛門と、天才剣士・病葉十三の2人が事件に巻き込まれ、一味が狙う江戸初期の怪僧・天海僧正が残したと伝わる秘宝を巡って争うのですが、折りしも、天空には巨大な彗星が現れます。

これだけじゃ何のことかわかりませんよね。この彗星、数百年後に地球に衝突して人類を滅ぼすことになるというのですが、果たして未来の人類を救うのは誰で、それはどのようにして・・という話に繋がっていくんです。途中の「不知火」一味の残虐さや、「宮本武蔵」の強さを描いた部分は迫力十分であり、吉右衛門と十三のキャラも悪くないだけに、全体の構成に無理があるのが惜しまれます。

2010/9