りぼんの読書ノート

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No.1レディーズ探偵社、引っ越しす(アレグザンダー・マコール・スミス)

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ボツワナ唯一の女性探偵マ・ラモツエを主人公とする「アフリカ・ミステリ」の3作め。前作で自動車修理工場の経営者J・L・B・マテコニ氏との結婚を決めたマ・ラモツエは、赤字続きの探偵社の経費節減のために、修理工場の一隅に引っ越すことにしたのですが、次々と難題が巻き起こってきます。

まず困ったのは、秘書から見習探偵に昇格させたばかりのマ・マコチの処遇。悩んだ末に夫に内緒で、修理工場の社長代理を兼務させると約束してしまうのですが、彼女は修理工場の仕事なんてできるのでしょうか? 一方で、未来の夫となるマテコニ氏はどうやら「鬱」にかかってしまったようで、マ・ラモツエは気が気でなりません。また、2人と親しい孤児院院長シルヴィア・ポトクワネは、不思議な少年を引き取ります。

そんな忙しい時に、手のかかる依頼が2件舞い込んできます。ひとつは尊大な政府役人の依頼で、弟の嫁が弟を毒殺しようとしている証拠を掴んで欲しいとのいう物騒な案件。もうひとつは、不祥事が続いたミス・コンテストの新女王にふさわしい候補を選んで欲しいというもの。

マ・ラモツエの「アフリカ女性の知恵」は健在ですが、秘書学校を優秀な成績で卒業したマ・マコチの有能ぶりが際立ちます。ミスコン女王にふさわしい女性を「賢く」選択しただけでなく、修理工場のダメダメな見習い工たちまでやる気にさせちゃうんですから。^^

ところで、「アフリカ唯一の成功国家」とされるボツワナですが、やはり様々な問題を抱えていることが、本書の中にも著わされています。マ・マコチが田舎から連れてきて養っている弟は、どうもエイズに罹っているようですし、モサルワと呼ばれるブッシュマン部族が、現在でも半野性的な生活をおくっている一方で首都ハボローネでは「アフリカ的な道徳」が崩れつつあって、部族間や地方間の格差が広がっているようなんです。本シリーズの続巻を読む中では、そのあたりも気にしてみましょう。

2010/7