りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

陰陽師~天鼓ノ巻(夢枕獏)

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平安時代陰陽師・安部清明と、彼の親友で横笛の名手・源博雅安部の名コンビが、京の都で起こる怪しく妖しい事件を鮮やかに解決していく人気シリーズの最新作。8編が収録されていますが、今回「助演」で登場したのは、百人一首でもおなじみの盲目の琵琶法師・蝉丸です。同時代に生き、ある種の怨讐を背負いながら生きたと言う蝉丸と、清明たちは、通じるところがあったのではないか・・とのことですが・・。

「瓶博士」 悪しき気を喰らう不思議な瓶に入っていたのは赤子でした・・。

「器」 哀しみのあまりに心を失った男女が邂逅を果たします。

「紛い菩薩」 5年前に夢の中でした約束とは、娘を菩薩に捧げることでしたが・・

「炎情観音」 毎晩のように顔を喰らわれる夢を見るという姫君の、禍の原因は?

「霹靂神」 蝉丸の琵琶と博雅の笛の協奏に鼓を合わせたものの正体は?

「ものまね博雅」 神格が木霊に憑依して・・。めったな神の前で笛を吹いてはいけません。

「鏡童子 闇の中を歩く童子を招く2人の神の正体は? そして童子の正体は誰?

一番の秀作は、蝉丸につきまとう美女の霊の正体が明かされる「逆髪の女」ですね。かつて呪詛によって彼の目を潰した元妻を許して哀れに思う、蝉丸の気持ちが深いのです。「いのち」と「心」の危うさと不思議さに触れる作品にしあがりました。「いくか」「いこう」をはじめとするいつもの会話は、もはやマンネリを超えて、伝統芸能の域?

2010/4