りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ルー・サンクション(トレヴェニアン)

イメージ 1

アイガー・サンクションの主人公、登山家にして大学教授、天才的美術鑑定家のジョナサン・ヘムロックは、アイガーでの仕事を最後にアメリカの組織CI I から引退していたのですが、今度はイギリスの諜報機関の任務に引きずり込まれます。

タイトルの「ルー」とはトイレのこと。イギリスのSS(サーチ&サンクション)組織は、もとトイレだった場所に設置されたために、こう呼ばれることになったという設定です。

残念ながら第一作には及びません。ヘムロックに殺人の濡れ衣を着せてまでして、強引に引きずり込んだ任務のスケールが小さいのです。高級買春宿の経営者が、英国政界の大物たちの痴態を撮影したフィルムを競売にかけるのを阻止するというのですから。

登場人物には、個性的なメンバーが揃ってはいるのです。「ルー」のヘッドを務めているのが神父とか、51歳になっても若々しい肉体を保つ禁欲的な悪役とか、常に裸体ですごす小柄な黒人美女とか、他人の痛みには著しく寛容なボディガードとかが登場するのですが、どことなく「007シリーズ」の亜流っぽい。美術品が絡んだり、登山家の腕を生かすあたりは、ヘムロックらしいんですけどね。

2010/4