りぼんの読書ノート

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楊令伝11(北方謙三)

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宋は既に滅亡し、宋を倒した金にも広大な中原を支配する準備はできていない。宋の将軍であった岳飛や張俊は地方軍閥として独立しそうな勢いを保つ一方で、江南に逃れた青蓮寺は新たな国の形を整えようとしていますが、まだはっきりとした姿は現れていません。中原に巨大な政治的空白地帯ができています。

そんな中で楊令の率いる新梁山泊は、いち早く民心を安んじて「国家」にもっとも近い存在といえるのですが、領土の拡張はせずに、東の日本と西のペルシャを結ぶ大貿易路を切り開いて経済立国を目指そうとします。攻城軍を率いていたお嬢様育ちの李媛も、その技術を輜重隊に生かすことができそうです。

呼延灼と張清が率いていた大隊指揮官の座は花飛燐と呼延凌が引き継ぐことになったようで、軍の編成も世代交代が進んでいます。そんな中で、子午山を下りて合流してきた秦明の息子・秦容が底知れない実力を発揮してくれますが、かつて楊令が担ったようなジョーカー的役割を果たすことになるのかどうか・・。しかし、個人レベルの活躍はもはや主題ではないのでしょう。「革命軍の闘い」として始まったこのシリーズは、「国家のあり方」を模索することに重点が移動してきているのですから。

戦時に領土的拡張をせず、貿易立国を目指すような存在が、時代の嵐に呑み込まれることなく「国家」として生き残れるものかどうか。「まずは過酷に統一をなしとげ、民心の安定など三代目あたりで行なえばよい」と言って楊令に与しなかった韓世忠の本音にも頷けますし・・。「水滸伝」のころは、登場人物が多くても馴染みのある名前が多くてスラスラ読めたのですが、第ニ世代となると、主要な人物以外は一回で覚えられずに困っています。^^;

2010/3