りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ストリート・キッズ(ドン・ウィンズロウ)

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犬の力が抜群に面白かったので、著者の過去の作品も読んでみました。本書は、元ストリート・キッドの探偵ニールが主人公のミステリ・シリーズ。

父親はもともと不明で母親が麻薬中毒。家庭が崩壊してニューヨークの路上で生活している9歳の少年ニールを救ったのは、彼をスリの現行犯でつかまえた探偵グレアム。ロードアイランドの名家が運営する問題解決機関「朋友会」の問題解決係として雇われているグレアムは、父親代わりとなってニールに接し、彼を一流の探偵として育て上げます。

大学生となったニールのところに持ち込まれたのは、2ヵ月後の民主党全国大会で副大統領候補に指名されることになっている上院議員からの依頼。彼の娘アリールはとんでもない不良娘で家出中なのですが、期日までに家に連れ戻し選挙民の前で「幸福な家庭」を演じる必要があるとのこと。手がかりは、数週間前にロンドンで彼女を見かけたという目撃情報のみ。果たしてニールは、娘を見つけ出し彼女を連れ戻せるのか・・という話なんですが、案の定、裏がありました。ニールは危機に陥ります。

ニールとグレアムの擬似父子コンビがいいですね。典型的なハードボイルド・キャラで「旧きよき時代」を体現しているようなグレアムと、小さな大学の英文学の教授にでもなって読書三昧の静かな生活を送ることが望みで、腕っ節も弱い現代っ子だけれど、捜査のためには危険に飛び込むニール。この対照的な2人が、互いを信頼し合っている様子が好ましいのです。将来『犬の力』を書き上げることになる作家の作品として、納得できます。

2010/1