りぼんの読書ノート

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製鉄天使(桜庭一樹)

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赤朽葉家の伝説のスピンオフ作品。本書の主人公は「赤緑豆小豆」ですが、この本を読んで「赤朽葉毛毬」を思い出さない人はいないでしょう。蹴鞠が自分の青春時代を描いた漫画が「アイアン天使」なんですから。

製鉄天使」とは、小豆が初代総長として率いていたレディースの名前。鳥取県の製鉄会社の長女として生まれた小豆は、マシンも武器も、鉄でできたものなら何でも自在に操る不思議な能力と荒ぶる魂に突き動かされるまま、中国地方全土の支配に乗り出します。小豆についていくのは、道路に火花を撒き散らして疾走する突撃隊長「花火」や、道路に文学を書きなぐりながら走る親衛隊長「ハイウェイ・ダンサー」など、「ひのえうま」生まれの少女たち。

もちろんマスコットガールの「すみれ」も忘れてはいけません。彼女との悲しい別れが、荒唐無稽な物語を引き締めています。果たして、「せかい(中国地方)」を制覇した後に忽然と消え失せたという「製鉄天使」の伝説とは・・? この作品に対して否定的なレビューが多いように思えますが、私は嫌いじゃありません。むしろ好きです(笑)。

一瞬輝いて燃え尽きるまでの刹那に「永遠」を夢見る少女たち。彼女らのやるせない気持ちを「武闘派・桜庭一樹」が描くとこうなるのでしょう。一方で、中国地方を「せかい」と呼び、19歳で平凡な大人になってしまう少女たちに対してちょっと突き放した感が漂うあたりも、この著者らしい。もちろんこの作品は、次のテーマに至るまでの「つなぎ」ですよね。

2010/1