りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

石のハート(レナーテ・ドレスタイン)

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12歳のエレンは幸福な少女時代をおくっていました。小規模ながらニュースの切り抜きサービス会社を経営し、家族を愛している父と、優しくて子供思いの母と、やんちゃだけど男らしい兄と、美人でおしゃまな姉と、可愛い弟に囲まれて。そして今度また、妹が生まれようとしていました。

ところが、妹が生まれたとたんに、一家が崩壊し始めてしまいます。原因は母親の「マタニティ・ブルー(出産後うつ病)」だったのですが、当時はまだ解明されていなかったんですね。エレンは幼いながらに母親に起きた異変を感じ取り、悪い予感に襲われるのですが、12歳の少女に何ができるわけでもありません。やがて、一家は惨劇に見舞われてしまいます。

25年後、医者になっていたエレンは、当時家族が住んでいた家を買い取ります。彼女の記憶に蘇る、当時の家族の姿・・。実はエレンは、あの惨劇以来、精神に変調をきたしていて、荒んだ生活をおくって
いたようなのですが、今度は彼女が母親になる番なんですね。彼女は心の平安を取り戻せるのでしょうか・・。

著者はオランダの作家です。実際にオランダで起きた事件を題材にしてこの小説を作り上げたとのことですが、物語が悲惨な事件に終始していないのは、それまでの幸福な家族の姿が、日常的で瑣末なエピソードの中からくっきりと浮かび上がってくるからなのでしょう。一方で、現在のエレンを巡る交友関係は、イメージが沸きにくかったのですが・・。

2010/1