りぼんの読書ノート

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おたから蜜姫(米村圭伍)

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痛快時代劇のおんみつ蜜姫の続編です。四国讃岐の弱小藩である風見藩の若殿と政略結婚そうになっている、やはり九州豊後の弱小藩である温水藩の姫君は、「暴れ姫」と異名をとるほどの冒険好きで、剣の達人。前巻では、天一坊事件が尾張徳川家の陰謀であると見抜いて、天下の一大事を解決した蜜姫ですが、救った相手である八代将軍・吉宗の卑劣な振る舞いに怒って、将軍様にも剣を投げつけてしまったものだから、幕府からも睨まれています。

今回、そんな蜜姫が巻き込まれたのは「かぐや姫」のお宝探し。風見藩の若殿が、なんと東北の大藩・伊達家の姫君との結婚をもちかけられたのですが、その条件がそれだったんです。これがうまくいけば、嫌な政略結婚を破談にできるとのことで、蜜姫も全面協力。

そもそも『竹取物語』は不思議な物語なのです。かぐや姫への5人の求婚者のうち3人は実在の人物で、最後には帝までコケにされるという不敬な物語が、なぜ宮中で好まれたのか。蜜姫の母親で読書好き・推理好きの諏訪御前の、「ダ・ヴィンチ・コード」も顔負けの見事な推理が冴え渡ります。

実在の人物の来歴をたどって、「かぐや一族」とは金の採掘や精錬技術を有する渡来人一族と目星をつけ、かぐや姫の求める宝物がどれも金精錬に欠かせない道具と見抜くという展開には思わず「なるほど!」。「仏の石の鉢はるつぼ」で、「蓬莱の玉の枝は水銀」で、「火鼠の皮衣はふいご」で、「龍の頸の玉は金丹」で、「燕の子安貝は骨灰」というのですから。

伊達藩の真の狙いは、徳川初期に佐渡や伊豆の金山を支配した大久保長安の隠し財宝を手に入れることにあったのでした。この人物、甲斐武田氏に仕えた後で徳川家康に用いられ、後に廃嫡された家康の五男・徳川忠輝の付け家老になり、伊達家とも縁が深かったんですね。

長安は「かぐや一族」の末裔を率いる総帥で、忠輝の母のお茶阿は長安が徳川に送り込んだ「逆かぐや姫」というのですから、まるで「シオン修道会」のような秘密結社。ラストは長安の隠し財宝を狙って、公儀お庭番と伊達黒脛巾組との暗闘が!果たして「おたから」は誰の手に渡るのでしょうか・・。

スリリングな蜜姫の活躍も、知性溢れる諏訪御前の謎解き部分も楽しめる、極上のエンターテインメントに仕上がっています。そうそう、諏訪御前の飼っている「武田忍び猫」タマの活躍も見過ごせません。^^

2010/1