りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京(楡周平)

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華麗なる一族』を現代風にアレンジして、韓国ドラマ風に味付けをした感じです。

親たちは全共闘世代。かつて安田講堂に立てこもって抵抗の無意味さを感じた女性は、今や大病院の経営者。彼女と愛し合いながらも、内部改革者となることを選択した男性は、代議士となって政権党の政調会長にまで上り詰めています。

子どもたちの世代は団塊ジュニアですね。大病院の経営者を母に持つ息子・崇は、政界転出の野望を抱く大蔵省キャリアで、事務次官の仲介によって、大物政治家の娘・尚子と見合いをします。富と権力を背景にした「完全な政略結婚」のはずだったのですが・・。

やたら高級ワインが登場する「上流階級ぶり」も鼻につきますが、ここからが、韓国ドラマ風のドロドロになっていくんですね。まずは大方のご想像の通り、崇と尚子が「異父兄妹」ではないかとの疑惑。そして崇が長年付き合った末にポイした女性の復習劇。(捨てられた女性だって、年収4千万を稼ぐ外銀の為替ディーラーなんですよ^^;)

「異父兄妹」での結婚を回避させようとする母親ですが、既に現職総理に仲人を頼んだ結婚をいまさらご破算にできるはずもありません。なんと母親は、自分の息子に復讐をしようとしている女性と手を組むのです!

政治家の娘で弱冠22歳の尚子の、冷酷なマキャベリストぶりも色を添えてくれます。そこに、交通事故は起きるわ、中国女性スパイの影も見え隠れするわで、果てしなくドロドロになっていくのですが、こういう展開をお好きな方はどうぞ・・という本。

違和感があちこちに残るのですが、極めつけは、最高権力者の座を目指している崇のダメ男ぶり。思い通りに行かないと母親や恋人に泣きつくような問題解決能力に欠ける男には、総理になどなって欲しくないものです。

2009/11