りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

少年少女飛行倶楽部(加納朋子)

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加納さんというと「ミステリ作家」の印象が強く、「アリスもの」の1冊を読みかけて興味を持てずに途中でやめたという接点しかなかったのですが、本書は楽しめました。あとがきで「底抜けに明るい、青春物語が書きたくなりました」と言っていますが、成功していますね。

ピーターパンのように空を飛ぶことを理想とする「飛行クラブ」。ひょんなことから、こんなわけのわからないクラブに入ってしまった、中学1年生の「くーちゃん」こと「海月(みずき)」と、偉そうなカミサマ部長・神(ジン)たちが、空を飛ぶんです。

とはいえ魔女でもない中学生が、本当に空を飛べるわけではありません。ちょっと「反則技」を持ち出しちゃうのですが、この本はロケット・ボーイズではありませんので、「空を飛ぶための物語」はその程度でいいのでしょう。

中心になるのは、思春期の中学生が友人や家族の中で「自分を知っていく」過程です。「男の子と女の子とどっちが欲しかった?」と両親に聞いて「海月が欲しかった」と言われたとのエピソードに象徴される、両親から愛された少女時代をすごした海月が全く異なる育ち方をした部長の話を知った時の、感情の揺れがクライマックスですね。

それだけではなく、幼馴染みの樹絵里や、意地悪女のイライザ(良子)の本音に気付く場面なども、生き生きと描かれています。一番ぶっとんでいたのは、「高所平気症」で「落下美少女」の朋(るなるな)ですけどね。彼女の姿を逆さまに描いた裏表紙もナイスです。^^

2009/10