りぼんの読書ノート

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秘密の花園(三浦しをん)

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「女子高生」・・少女から女性へと変わっていく多感な年頃。自分の高校時代なんて、今になって思い返すと、恥ずかしいことがいっぱい。できれば忘れてしまいたいような時期。しかしそれだけに、「自分の秘密を繰り返し書き続ける人種」である作家としては魅力的なテーマなのでしょう。多くの作家が「女子高生」について描いています。

本書は、3人の女子高生がオムニバス形式で順番に語る形式をとった小説です。性的なトラウマを抱えて、男の子とうまく付き合えない那由多。2人の友人の間に割り込めないものを感じつつ、教師との恋に悩む淑子。常に冷静な才媛なのに、那由多に対して無自覚な恋心を抱いてしまった翠。

3人の独白から「女子高生」という複雑な時期の「多感さ」が浮かび上がってきます。さらに、この3人が決して特別な存在ではなく、小説では捨象されている「その他大勢」の女子高生も多かれ少なかれ「多感さ」を分かち合っていることも示唆されます。当然ですけどね。

本書の内容が「作者の体験」とは思えませんが、当時の想像(妄想?)くらいは入っているのでしょう。やはり小説家とは、ある意味で「自分の秘密」を自分で暴かざるをえない、自虐的な人種のようです。

2009/10