りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ミレニアム2 火と戯れる女(スティーグ・ラーソン)

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第2部では、リスベットの衝撃の過去が明かされます。天才的な頭脳を持ちながら、他人に自分を理解してもらうことははじめから放棄しており、社会と折り合いをつけることができず、自分を傷つける敵には死に物狂いで立ち向かい、さらに、「女を憎む男たち」には容赦ないというキャラは、どうして出来上がったのか。彼女が12歳の時に遭遇した「最悪の出来事」とは、いったい何だったのか。

ミカエルへの恋に破れたと思いこんだリスベットは、ミカエルと完全に訣別している間に、なんと殺人犯の汚名を着せられてしまいます。ミカエルが責任者を勤める雑誌「ミレニアム」は、ジャーナリストのダグと恋人ミアが進めていた、悪質な人身売買と強制売春の実態に迫る特集を予定していたのですが、ザラと呼ばれる謎の人物に迫ろうとした矢先に、ダグとミアは射殺されてしまいます。犯行現場に残された銃には、リスベットの指紋が!

警察は、精神病歴を持つリスベットを殺人犯と断定して、指名手配に踏み切るのですが、事件を彼女の仕業とは信じられないミカエルは、独自に調査を開始します。徐々に真相に迫る彼らの前に姿を現わした「敵」は、リスベットのおぞましい過去でもあったのです・・。

「巨悪」はもちろんのことながら、どこにでもいる「小悪」の存在がうざったい。有能ながら女性を蔑視している警察官。心を開かない少女を精神病と決め付ける精神科医。女性を逆恨みして歪めた情報を漏洩する捜査官。同性愛者や外国人への偏見を煽るマスコミ。買春の過去が暴かれようとして、開き直ったり抵抗したりする男たち・・。

「巨悪」との闘いの前に、こんな連中が足を引っ張るのだからたまったもんじゃない。でも、こういった「小悪」の堆積が「巨悪」を生み出しているのも現実です。バルト三国やロシアからの出稼ぎ女性を買っているという、スウェーデンの醜い面はアジア各国と日本の関係を見ているようで心苦しい。だからこそ、偏見を持たずに信頼しあえる関係は、希少で美しいのでしょうが・・。

ハリウッド映画ならテーマミュージックを高らかに流して、めちゃくちゃ感動的な場面に仕立て上げそうな、離反していた主人公たちが再び手を組む場面ですら、途絶えがちなパソコンでの会話にしてしまう渋さが北欧らしい・・なんて思っていたら、終盤は一転してとんでもない展開になってしまいました。第3部の『眠れる女と狂卓の騎士』が待ちきれません。

2009/8