りぼんの読書ノート

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マリリン・モンローという女(藤本ひとみ)

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父親の居ない家庭に生まれ、母親が精神を病んだために孤児院や養家をたらい回しにされた少女が、女優としての成功と幸福な家庭を追い求めます。ハリウッドで成功の階段を上りながらも、それと引き換えに手に入れたものは「女性としての幸福」とはほど遠いものにすぎなかったのですが・・。

「世界の恋人」とか「アメリカのセックスシンボル」と称され、ジョー・ディマジオアーサー・ミラーと結婚し、ケネディ大統領とも浮名を流した女優マリリン・モンロー。演技派へと転換を図ろうとしながらも「セックスシンボル系」以外の作品はヒットせず、精神的に不安定な状態を続けた後に睡眠薬の大量服用によって36歳の生を終えた女性。彼女の死は、事故死とも、自殺とも、謀殺とも噂されています。

藤本さんはそんなマリリンを、少女時代の不幸が心の中に作り上げた「多重人格性」を持った、矛盾した女性として描きました。真面目ながら繊細な魂を持ったジーン(本名)。人間不信で自分勝手な魂を持ったグリーディ(強欲)。享楽的で投げやりな魂を持ったマリリン(芸名)。彼女を「人形」とか「金づる」とかして見ようとしない人々の間で生き続けた結果、本来の魂であったジーンは疲れ果て、他の人格が前面に出てくるようになります。彼女が最期を迎えたときには、どのような気持ちだったのか・・。

アンナ・フロイトジークムント・フロイトの娘)に「境界性人格障害」と診断されたことがあるとの事実が、このような着想を生んだのでしょうが、ちょっと表面的な感じ。最初から最後まで「弱い女性」として描かれたマリリンには、魅力がないんです。やはり映画興隆期の女優の半生を小説化した、林真理子さんのRURIKOが、「時代の熱気」も「女優の魅力」も、生き生きと描き出していたのとは大きな違いです。これは、著者の筆力の差なのか。それとも対象とした女優の差なのか・・。

2009/6