りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

グリフターズ(ジム・トンプスン)

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「グリフターズ」とは詐欺師たちのこと。口先たくみに人を騙して小銭を稼いでいるロイですが、彼がこんなふうになったのは、まだ30代で、14歳の時にロイを生んだ若い母親リリイの影響があったんです。息子であるロイの世話や教育をほとんど放置していただけでなく、リリイ自身が競馬の飲み屋の手先を長年つとめているのですから。

ロイはマザコンなんでしょうか。彼の恋人は、やはり10歳も年上の未亡人モイラ。最近ツキが落ちてきて詐欺を続けざまに見破られたロイですが、「仮の姿」として籍を置いていた販売会社で、営業マンのサボりやごまかしを見破る能力が認められ、営業統括責任者へと抜擢されるという話がもちあがります。いっそ詐欺師の仕事は引退して、まっとうな仕事で頑張ろうかとも思ったロイですが、そう簡単にはいきません。なんと、恋人のモイラも詐欺師だったのですから・・。

詐欺師たちが引っ掛かる「運命のいたずら」はコミカルでもあるのですが、この物語は『スティング』や『オーシャンズ11』のようには明るく終わりません。最後には、思いっきり意表を衝かれる、母と子の後味の悪いドラマが待っています。最近になって再評価されているという著者ですが、このような後味の悪さが、生前あまり売れなかった理由のように思えます。

2009/6