りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

エンジェル・エンジェル・エンジェル(梨木香歩)

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寝たきりになってボケてしまったおばあちゃんの世話をすることと引き替えに、熱帯魚を飼うのが許されたコウコ。彼女には「熱帯魚を飼育することで癒されたい」という思いがあったのですが、悲惨な結末を迎えてしまいます。熱帯魚が共食いをはじめてしまったのです。

ところが熱帯魚の水槽のモーター音が、思わぬ副産物を生じさせていました。おばあちゃんがずっと罪悪感を抱いてきた、少女時代のせつない記憶を呼び覚まし、少女に戻ったおばあちゃんと、コウコの不思議な交流がはじまります。

この物語は、最後には「許し」とは何かという深い問題にたどり着きます。エンジェルフィッシュを悪魔のような存在にしてしまった自分の身勝手さから、堕天使が悪魔へと変貌していくさまを見ていたはずの神の悲しみを連想するのはさすがに飛躍しているけれど、コウコがひとつ成長したことは間違いありません。

「命のつながり」というのは、西の魔女が死んだから沼地のある森を抜けてへと、著者がずっと紡いできたテーマです。梨木さんの初期の小説ですが、同じ流れの中にありますね。

2009/6