りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

あなたはなぜ値札にダマされるのか?(オリ&ロム・ブラフマン)

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副題に「不合理な意思決定にひそむスウェイの法則」とありますが、「Sway」とは「人間の意識の中に潜み合理的な行動を妨げる力」のことであり、人はなぜ、生活やビジネスの大事な場面で「不合理な決断」をしてしまうのかを解析した「行動経済学」的な著作です。とはいっても、内容は難しくはありません。いかにもありそうなエピソードが、「法則」の名のもとに紹介されています。

1.損失回避の法則
2.コミットメントの法則
3.価値基準の法則
4.評価バイアスの法則
5.プロセスの公平性の法則
6.金銭的インセンティブの法則
7.グループ力学の法則

どれも「ありがち」であり、いかにも陥りそうな「法則」ですが、一番印象に残ったのは「プロセスの公平性」に登場したエピソード。100ドルを2人に与えて、一方に分配を決めさせた時に、もう一方がそれを了承するかどうかを判断させる実験。了承されれば100ドルは2人のものになりますが、了承されなければどちらも何も貰えません。

大半の被験者が50ドルずつの折半を提案し、もう一方は当然それを了承するのですが、中には「70:30」とか「80:20」の提案をする者がいて、その場合にはもう一方は必ず拒否するそうなんです。ゼロよりは20ドルでも30ドルでも貰ったほうが特なのに・・。

でもこれはアメリカ人の場合。あるアフリカの部族で同じ実験を行なったら、必ず不公平な分配を提案し、もう一方は必ずそれを受け入れたとのこと。これはひょっとしたら、経済性に基づいた行動なのか? どうやら公平の概念が異なっていて、提案する側に選ばれた段階で「幸運」を得たことになり、そうでなかった方は既に「不運」を受け入るという精神的な土壌があるようで、そこではやはりそれなりの「公平性」が重視されているとのこと。やはり経済性の問題ではないんですね。「公平」を「正義」とか「理念」とか「誇り」に置き換えても成り立ちそうなエピソードです。ただ実際問題として、こんな場合に経済性を貫けるかどうかは悩ましい。

個人的に「気をつけなきゃ」と思ったのは「損失回避の法則」。損失に対して過剰反応をしてしまい、損失回避の為に非合理的な行動を取ってしまうことを指して言っているのですが、守りに入ってしまうと、チャンスを逃すどころか損失を拡大するケースが多いということは、この1年の株の損失で、よ~く身に染みております。^^;

2009/5