りぼんの読書ノート

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プリンセス・トヨトミ(万城目学)

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京都のホルモー、奈良の鹿男ときたら、次の舞台は大阪ですね。ただはじめに言ってしまうと、この作品は前2作にあったような楽しさに欠けています。「大阪の人々が400年の間、豊臣家の子孫を守ってきた」という設定が、普通の伝奇小説とそれほどかけ離れていないせいなのでしょうか。

東京から来た会計監査院の調査官(松平、旭、鳥居)が見つけ出した「大阪の秘密」とは、明治維新直後のドサクサ期に、明治政府と大阪国が結んだ秘密条約でした。しかも、大阪国が存在する目的は、徳川に滅亡させられたはずの豊臣家の子孫を守っていくためであり、大阪の民衆は、その秘密を代々伝えながら守ってきたというのですから、驚きです。

当代のプリンセスである茶子も、代々プリンセスを側で守る家系の真田家の跡取り息子の大輔もまだその事実を知らされていず、普通の中学生活をおくっています。いや、ちょっと普通じゃないかな。大輔には性同一性障害があって、激しい女装願望があるのですから・・。

大阪の「大秘密」が東京の会計監査院によって明るみに出されようとする時に、大阪に何が起きるのか。少女たちの運命はいかに・・という話なんですけど、古代のオニや卑弥呼と較べて、豊臣家の話はまだ現実味がありすぎるのかもしれません。毎年のようにドラマになってますしね。

蜂須賀、石田、浅野、加藤、大谷・・といった豊臣家ゆかりの名字を持った、登場人物のキャラも生きてませんし、なにより「松平」の存在が中途半端。さらに言うと、せっかく秀吉の妹の名前をもったハーフの絶世の美女捜査官「旭」も、なんのために出てきたのかよくわかりません。名前からして、彼女もまた「もうひとりのプリンセス・トヨトミ」かと思ったのですが・・。次作に期待しましょうか。

2009/5