りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

メモリー・キーパーの娘(キム・エドワーズ)

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せっかく面白いテーマなのに、浅い。テンポいい展開だけど、類型的。TVドラマ向けの小説・・と思って読んでいたら、既にTV映画化されたとのこと。

医師の妻が男女の双子を出産したものの、妹のほうは明らかなダウン症。かつて病弱な妹を亡くした母の嘆きを忘れられないでいた医師の夫は、愛する妻を悲しませたくない一心で「娘は死産だった」と偽り、娘を施設に託すこととしますが、医師に密かな想いを寄せていた看護婦は障碍を持つ女児を自分で育てる決意をして行方をくらましてしまいます。

テーマは明快。「ひとつの嘘が大切な家族の運命を変えていく」。医師の家庭では、医師がひとりで抱えた秘密と、妻が感じてしまった喪失感が、裕福で一見幸せそうな家族をしだいに蝕んでいきます。一方の看護婦は、障碍児を抱えたシングルマザーとして苦労しながら、理解者にも恵まれてたくましく生きていく。

物語は、対照的な2つの家庭と、兄妹の成長振りを数年ごとに描いていきます。25年後、ついに2つの家族はめぐり合い、全ての真実が明るみに出るのですが、その時には既に・・。タイトルの「メモリー・キーパー」とは、医師の趣味である「写真」のことでした。愛する妻を、愛する息子を、幸せな家族を、永遠にとどめておこうとした彼の努力は報われたのでしょうか。障碍者政策では先進国であるアメリカでも、つい最近までこのような時代があったのですね。

2008/12