りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

月の骨(ジョナサン・キャロル)

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過去には色々あったけど、心優しい男性と結婚して、可愛い娘だって授かった。カレンは幸福な生活をおくっていたのです。ところが最近になって不思議な夢を見るようになってしまいました。ロンデュア・・不思議な夢の世界。カレンはそこで息子のペプシと一緒に、人語を話す犬や狼や駱駝を連れて、五本の月の骨を探す旅をしているのです。夢だからとりとめのない世界。夢なのに妙に連続している物語。

やがてカレンは気がついていきます。ペプシとは、かつて彼女が堕ろしたために、生まれなかった男の子。五本の月の骨を探し出すことはカレンが少女時代に果たせなかったことであり、五本の月の骨を探し出した者がロンデュアを統治するということに・・。

夢の中だけのことではありませんでした。ロンデュアが邪悪な者に支配されたとき、それは現実世界にも牙を向いてくる。カレンは、愛する者たちのために闘うことを決意します。生まれなかった息子のためにも、生まれた娘のためにも・・。

こういう小説は難しいですね。説明不足では理解できないし、説明過剰になってしまっては興をそいでしまう。たぶんそれは「書き手」の問題だけではなく「読み手」にも求められるものであり、ほどよく理解して、ほどよく楽しむ感性が大切なのかもしれません。ファンタジーの読み手には、ある意味で幼い心が必要なのです。

だからなのでしょう。この本にジャンル分けなど不要だけれど、「ダーク・ファンタジー」と言われる小説が少ないのは。

2008/12