りぼんの読書ノート

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聖遺の天使(三雲岳斗)

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旧宮殿にて』と同様、ミラノ時代のレオナルド・ダ・ヴィンチを主人公としたルネサンス・ミステリーですが、こちらのほうが先に書かれたようですね。

ミラノ宰相ルドヴィコ・スフォルツァ(通称イル・モーロ)によってフィレンツェから招聘されたレオナルドは、まだ30歳の男盛り。伝説では(小説でも)、相当の美男子だったようで、ルドヴィコに仕えていながら、まるで旧友同士のように倣岸不羈にふるまっています。

ルドヴィコの愛妾とされることの多いチェチリアも、はじめから登場します。というより、ミラノでただひとり、ルドヴィコに意見できる彼女が、レオナルドを推薦したとされています。チェチリアは愛妾などではなく、もっと高貴な存在とほのめかされていますが、本書でも、『旧宮殿にて』でも、その正体は謎のまま。続編の構想もあるのでしょうか?

本書では、ミラノの北方、険しい山々の迫るコモ湖畔の館で起きた不思議な事件に、3人組が挑みます。その館にある「聖母子を出現させる香炉」なるものが「聖遺物」かどうかの判定をくだすために集まったイタリア各地の聖職者たちの前で、香炉の持ち主で、館の主人でもある建築家が、壁に磔にされた格好で死んでいるのが発見されたのです。しかも、発見者は「天使を見た」と言うのですから・・。

もちろん、レオナルドの科学的精神と冷静な観察によって謎は解かれます。それにしても、謎を解くためにチェチリアが白貂を抱く姿の肖像を描いたりしちゃうのだから、優雅なものですね。この絵は、レオナルドの数少ない代表作となって現在に遺されています。

2008/2