りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

街道をゆく 32.阿波紀行・紀ノ川流域(司馬遼太郎)

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唐突にこんな本を読んだ理由は、今年のGWに四国旅行を計画しているから。今まで四国には一度も足を踏み入れたことがないんです。コースや日程を決める前に、何か関係のある本を読んでみようと思った次第。

司馬さんの『街道をゆく』シリーズは初めて読みましたが、おもしろいですね。ある場所を訪ねることは歴史を訪ねることという基本的なスタンスはもちろんのこと、「街道」とはある場所を別の場所と結ぶものであるとの視点が明快で、その土地にまつわるエピソードを多面的・立体的に語ってくれるのです。

江戸期には徳島の一部であった淡路島が明治以降に兵庫県へ組み込まれる過程とか、徳島本国における民と武家との関係の成立過程とか、透明なテグスが徳島で発明されて全国に広まっていったことなど、土地の古老にも伝わっていないことまで調べちゃうのですから。足利時代の斯波氏から、三好党、松永弾正に至る200年間、阿波衆が京都で権力を握っていたことが、京言葉に影響を与えたに違いないなんて発想には、もう脱帽です。

吉野川中流の「脇町」に行ってみたくなりました。特産だった藍の集積地として栄えて「うだつ」の残る町として紹介されている脇町は、中世において自治権を担っていた町衆の栄光が継承されていて、「ヨーロッパの古い町に比べても、構造物の厚みや界隈としての造形性においてひけをとらない」とまで絶賛されているのですから。司馬さんが行ったのは1988年のことなのですが・・。

もう一箇所行くとしたら、秘境といわれる「祖谷」ですね。豊臣政権は「一種の農奴である名子を全国で廃止した革命政権であった」としながら(太閤検地のこと?)、地元の猛反対にあって、ここだけが例外として明治まで残されたそうです。平家の落人部落伝説と合わせて、ここがどれほどの秘境だったかを
示すエピソード。

「紀ノ川紀行」は根来寺高野山の関係など宗教中心でしたが、根来の鉄砲集団が秀吉によって壊滅させられてから、全国に召抱えられた残党によって「根来姓」が広がったなんて想像も愉快です。徳島は、四国旅行のコースから割愛しちゃおうかとも思ってましたが、逆に外せなくなってしまいました。^^;

2008/2