りぼんの読書ノート

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中原の虹4(浅田次郎)

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清朝末期から共産党による統一まで100年以上も続く、激動の中国近代史。浅田さんはどこまでを描くのだろうと思っていましたが、張作霖を主役とし、袁世凱を準主役としたこの本は、東北王となった張作霖がついに長城を越えて中原になだれ込む場面でいったん終わります。

ラストの長城越えは、300年前に幼い順治帝清朝の第三代皇帝)を擁して中原に進出した、ダイシャンをはじめとする清朝勃興記の満州族の姿と重なります。その後、清朝300年の平和を築くに至った古事と、東北地方の混乱に拍車をかけ、最終的には日本による満州支配を招くに至った張作霖の中原進出を比較してはいけないのかもしれませんが。

ともあれ、第2巻で西太后が亡くなった後の本書は迫力に欠けてしまい、後日談のようでした。張作霖の腹心となった春雷と、最後の宦官になった春児。それに梁文秀の妻となった銀鈴の三兄妹の再会の場面だって、物語的には空回りした感じです。

わずかに、志半ばで凶弾に倒れた、宋教仁の掲げた理想が光っただけ。宋を暗殺したのは、袁世凱とされていましたが、最近では孫文派の可能性もあると言われているようです。本書では、意外な勢力が犯人とされていましたけどね。

この後、南方で力をつけて国民党を掌握する蒋介石を主役として、歴史は回っていくのですが、日中戦争に至る歴史を「浅田節」で小説化していくのは難しそうです。もし続編が出るのであれば、五族協和の理想と満州国の実体との乖離に悩むであろう、吉永中尉あたりが語り手になるのかもしれません。

2008/2