りぼんの読書ノート

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ベルリン1919(クラウス・コルドン)

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第一次大戦末期のベルリンの貧民街でたくましく生きている13歳の少年・ヘレと家族を、激動が襲います。父親が、片腕を失った傷病兵として帰宅したのは悲喜こもごもの出来事でしたが、キール軍港の水兵が反乱を起こしたとのニュースが飛び込んでくるや否や、首都のベルリンにも革命の火の手が上がって皇帝は退位。戦争は終結

ところが、社会主義革命を推し進めようとする労働者たちの前に立ちはだかったのは、たちまちのうちに保守化したエーベルト社会民主党政権でした。後に共産党となるスパルタクス団は急な進展に対して明らかに準備不足であり、せっかく掴んだ勝利をものにできなかったのです。革命派の水兵たちも、理論的指導者のリープクネヒトやローザ・ルクセンブルグらも虐殺されて革命は敗北。ワイマール共和国が誕生します。このあたりまでは世界史で学んだこと。実際にこの時代を生きた少年と家族を生き生きと描いた本書は、この時代のイメージを、鮮烈に焼き付けてくれました。

一般家庭にとっては、まず、ひもじさや寒さや病気との戦いがあったこと。革命から蜂起に至る中で、机を並べていた級友たちと引き裂かれていってしまうこと。学校では、労働者の子弟も、官僚の子弟も友達どうしだったのですから。革命が頓挫した途端、保守的な教師が高圧的な態度を取り戻すあたりもリアルです。

貧しい労働者の多い近所の人たちだって、一枚岩ではありません。神を信じて戦いを厭う老婆だって、穏健派の社会民主党支持者だって、スパイだっているのです。そして何より、愛する者たちを襲う悲劇・・。

わずか3ヶ月間の出来事ですが、これはもう内戦ですね。スペインの内戦を描いた小説は多いけど、1919年のドイツ革命を描いた小説ははじめて読みました。小説や映像の役割は大きいですね。歴史がドラマとして記憶に残るのですから。本書の続編に、『ベルリン1933』と『ベルリン1945』もあります。成長したヘレや家族たちとの再開が楽しみです。

2008/2