りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

私はスカーレット 下(林真理子)

アメリカ南部白人が築いた貴族的な文化社会は南北戦争という「風」とともに消え去ってしまいました。その一方で16歳のわがまま娘にすぎなかったスカーレットは、南北戦争を契機として力強い女性へと変身。タラの農園を守るために、資産家フランクを妹スエレンから奪い取って愛のない結婚をし、夫をさしおいて自ら商売を始めるのです。もちろんそんなことは南部女性の流儀に反しており、また北軍の移住者ともビジネスをおこなったために、スカーレットは嫌われ者になってしまうんですね。このあたりは戦後復興時の日本の状況と似ています。

 

そして決定的な事件が起こります。平気で貧民街を通っていたスカーレットが襲われそうになったことをきっかけとして、フランクやアシュレーを含む南部男性たちが決起。しかしそれは罠でした。待ち構えていた北軍にフランクは射殺され、レットの機転に助けられたアシュレーも重傷を負うのです。彼らがKKK団員であったことは驚きでしたが、当時はまだ北軍に対抗する南部文化の守り手との側面もあったのでしょうか。

 

ともあれ、1度目は振られた腹いせに、2度目は金のために結婚したスカーレットは、ついに愛のためにレット・バトラーと結婚。しかし本書はハッピーエンドとはなりません。似た者同士の2人の関係は、衝突を繰り返した後に、娘の死によって完全に破綻。その一方で流産して死の床に着いたメラニーを見て怯えるだけのアシュレーに幻滅。ようやくスカーレットはレット・バトラーへの愛に気付くのですが、彼は去っていきます。でも彼女は最後にもう一度誓うのです。もう一度やり直すと・・。

 

林さんは、スカーレットの造形がブレまくっていると書いていますが、アシュレーもレット・バトラーも一緒ですね。唯一メラニーだけが、終始変わらない誠実さと芯の強さを見せてくれました。この物語は、メラニー視点で書いたほうが面白いのかもしれません。いや、主人公に据えるには天使すぎるか・・。

 

2024/2