りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ビターシュガー(大島真寿美)

f:id:wakiabc:20201229142733j:plain

『虹色天気雨』から数年後、市子、奈津、まりの友達関係には変化がありません。もっともそれぞれの生活には大きな変化がありました。奈津は失踪騒ぎを起こした夫・憲吾とは別居して一人娘の美月と2人暮らしの中で、秘書として再び働き始めています。美月ももう中学生で難しい年ごろではあるものの、母親たちの間にもグイグイ入ってくるようになりました。あてにならないカメラマンの旭と別れたまりは、どうやらずっと年上のバツイチ男性に恋してしまった模様。

 

そんな中で市子の生活だけは変化に乏しかったのですが、親しくしているゲイの三宅ちゃんからのたっての願いで、旭をしばらく同居させることになってしまいました。もちろん何もないのですが、なんとなく皆には言い辛い中で美月に嗅ぎつけられて、弱みを握られてしまいます。母親の奈津に内緒で別居中の父親・憲吾に会うために信州に連れて行って欲しいと頼まれ、秘密が増えてしまいます。こんなことで3人の友情に綻びが入ってしまうのでしょうか。

 

でも大丈夫。もちろん秘密はバレますが、大きな波風を立てることもなく、物事は収まるところに収まっていきます。『虹色天気雨』で美月の運動会参観が山場だったように、本書では三宅ちゃんの会社のバイト嬢がオフィスで挙げる結婚式と、皆そろっての信州へのリンゴ狩ツアーで大団円。もちろん3人の関係はその後も続いていくのです。キーワードは「適度な距離感」ですね。

 

2021/2