りぼんの読書ノート

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フラナリー・オコナーのジョージア(サラ・ゴードン)

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1925年生まれのフラナリーは、大学院時代のアイオワと卒業にニューヨークで暮らした4年間を除いて、39歳で亡くなるまでのほぼ全生涯をジョージアで過ごした作家です。「暴力的でグロテスク」という印象が強かったために、これまで避けてきた「フラナリー・オコナー」の全短編を読んでみたのは、本書を読んだからです。著作の感想はそちらのレビューに記しておきますので、ここでは本書のテーマである「彼女の生涯と暮らした場所と作品との関係」について纏めておきましょう。 

 

13歳までの少女時代を過ごしたサヴァンナでは、裕福な両親の愛情に包まれていました。しかしカトリックの教育と、近くにあった孤児院への訪問は、彼女の想像力を刺激したようです。瀟洒テラスハウスである生家は財団によって保存されていて、公開もされています。 

 

一家は2年間のアトランタ暮らしの後に、父親が難病にかかったため、母親の実家があるミレッジヴィルに転居。独立戦争後に建設された町であり、一時ジョージア州議会も置かれたことがあるものの、基本的には僻地の田舎町。父はその翌年に亡くなりますが、フラナリーはここでカレッジを卒業する20歳まで暮らし、後の創作の糧となる豊富な材料を見出していきます。 

 

25歳の時に父と同じ難病に罹ったフラナリーが、療養しながら作品を創作し続けたのは、ミレッジヴィル市外にあったアンダルシア農場です。彼女の作品に何度も描かれる野原や森や、寡婦が営む農場のモデルは、もちろんこの農場ですね。彼女がたくさん飼っていたクジャクはもういなくなってしまいましたが、農場は現在も一般に公開されています。 

 

フラナリーの著作の底流には深いカトリック信仰がありますが、その原点は、ミレッジヴィル郊外にある精霊修道院のトラピスト修道士たちと交流を持ったことなのでしょう。原理主義や排外主義やニヒリズムを排して、深く内省することで「神秘的想像力」を求めるという彼女の姿勢は、ここで養われたようです。 

 

本書の目的は「フラナリーの作品にこめられた神秘とジョージアという現実世界の橋渡し」にあるようです。もちろんそれは成功しています。彼女の作品は、表層的には「暴力的でグロテスク」に見えるものであっても、その背景には豊穣なアメリカ南部という土壌が広がっていると感じることができるようになりましたので。 

 

2020/9