今更ながら堀田善衞さんの作品を読みふけっています。これまで大著『ゴヤ』と『ミシェル城館の人』しか読んでいなかったのですが、『路上の人』を読んで彼の著作が持つ熱量を理解できたせいかもしれません。今月1位とした『若き日の詩人たちの肖像』の熱量はハンパありません。
1.若き日の詩人たちの肖像 上下(堀田善衞)
半世紀以上も前に書かれた自伝的作品ですが、今読んでも著者の問題意識が生々しく伝わってきます。戦争の暗い影に覆われた時代に、詩人たちは死を意識しながらどのような生をおくったのか。現在の私たちが享受しえるほどの自由を得るために、彼らはどのような犠牲を払ったのか。そして彼らが見た国家の本質とはどのようなものだったのか。若い人たちにこそ読んで欲しい作品ですが、せめて著者と親交が深かった宮崎駿さんのジブリ作品を見た際には、かを感じ取って欲しいものです。
2.月の光(ケン・リュウ編)
この数年で世界中に爆発的に広まった中国SFのアンソロジー第2弾。中国の科学技術の発展と比較すると遅すぎるくらいですが、1980年代に反体制小説として批判されたことで、2000年代に入るまでてSF小説家は存在していなかったとのこと。個人的には、中国の歴史を踏まえた作品や、中国風の超自然的モチーフを含む作品が好みです。
信濃に隠棲した自然派の俳人という印象が強い一茶ですが、もともとは職業俳人を目指して上京した、現代の若手芸人のようにギラギラした人物だったのかもしれません。一茶の日記に記されていた「ある事件」がターニングポイントであったと見抜いた著者による傑作戯曲に加えて、一茶をめぐるエッセイ、俳人・金子兜太との対談、著者選の「一茶百句」をセットにした「完本」です。
【次点】
・レオナルドのユダ(レオ・ペルッツ)
【別格】
・戦争の犬たち(フレデリック・フォーサイス)
【その他今月読んだ本】
・アポロンと5つの神託 3.炎の迷路(リック・リオーダン)
・ラ・ロシュフーコー公爵傳説(堀田善衞)
・ラ・ロシュフーコー公爵傳説(続)(堀田善衞)
・フラナリー・オコナー全短篇 上(フラナリー・オコナー)
・フラナリー・オコナー全短篇 下(フラナリー・オコナー)
・フラナリー・オコナーのジョージア(サラ・ゴードン)
・ギヴァー 記憶を注ぐ者(ロイス・ローリー)
・ギャザリング・ブルー 青を蒐める者(ロイス・ローリー)
・ある子ども <ギヴァー4部作>完結編(ロイス・ローリー)
・さよならの儀式(宮部みゆき)
・橋上幻像(堀田善衞)
・お伊勢ものがたり 親子三代道中記(梶よう子)
・オデッサ物語(イサーク・バーベリ)
・方丈記私記(堀田善衞)
・マジック・フォー・ビギナーズ(ケリー・リンク)
・紅霞後宮物語 第0幕4(雪村花菜)
2020/9/29