りぼんの読書ノート

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キャッツ(T.S.エリオット)

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映画版「キャッツ」を見てきました。生々しい人猫CGを不気味と感じた人も多かったようですが、素晴らしい音楽と演技の前には、そんなことは気になりませんでした。オリジナルのミュージカルを少しだけ変えた、視点猫を据えたストーリーも成功していると思います。 

 

本書は「キャッツ」の原作にあたるエリオットの詩集であり「ポッサムおじさんの実用猫百科」との副題がついています。「キャッツ」の猫たちの名前や性格だけでなく、歌詞も全く原作通りだったのですね。ギャンビーキャットの「ジェニエニドッツ」も、天邪鬼な「ラム・タム・タガー」も、泥大食いの「バストファー・ジョーンズ」も、棒猫「マンゴージェリーとランペルティーザー」も、長老猫「デュートロノミー」も、劇場猫「アスパラガス」も、鉄道猫「スキンブルシャンクス」も、ミステリー猫「マキャヴィティ」も、魔術師猫「ミスター・ミストフェリーズ」も、エリオットの詩をそのまま歌っているのです。ついでながら挿絵画家ゴーリーが描いた猫たちの姿も、ほとんどそのままミュージカルで再現されています。 

 

「メモリー」を絶唱する老娼婦猫「グリザベラ」だけは登場していないのですが、子供たちが読むには悲しすぎるとのことで詩集からカットされていたそうです。しかし8行だけ書かれた断片を、エリオットの未亡人が「キャッツ」のスタッフに渡したことで、ミュージカルに芯が通ったのです。アンドリュー・ロイド・ウェバーが、一晩で「メモリー」を書きあげたとのエピソードが、TV番組で紹介されていました。 

 

ちなみに、まだ舌が回らないエリオットの姪が「dear little cat」と言おうとして、「ジェリクル」という言葉が生まれたとのことです。 

 

2020/3