りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2007 My Best Books

2007年もあと1日残っていますが、1年を振り返ってBest Booksを選んでみたくなりました。

長編小説部門

また会う日まで (ジョン・アーヴィング)

大好きなアーヴィングさんの5年ぶりの新作です。オルガニストの父に捨てられた刺青師の母により、女の園で育てられたジャックが女性たちとの遍歴を経て、父親探しの旅をはじめます。それは同時に、自分自身を発見する過程でもありました。それぞれが「読ませる」物語ともなっている、丁寧に書き込まれたエピソードが、感動の最終章に向かって見事に収斂していきます。長編小説を読む醍醐味を堪能させていただきました。

短編小説部門

空中スキップ (ジュディ・バドニッツ)

めくるめく「バドニッツ体験」! 彼女の作品は「跳ねて跳ぶ」のです。ありえない設定や、とんでもない展開が、冷静でリアリスティックな視点から語られるとき、私たちの世界も揺らぎます。人生の一瞬を鋭く切り取る、短編の面白さがぎっしり詰まった一冊でした。

その他部門

イスタンブール (オルハン・パムク)

イスタンブールに生まれ育ち、この街を誰よりも愛している著者が、自らの人格形成に大きく影響を与えたイスタンブールの「憂愁(ヒュズン)」を描ききってくれました。青少年期の自伝的な物語に挿入されていく、イスタンブールを定義しようとするさまざまな試みから伝わってくるのは、故郷や家族に対する深い愛情です。

特別賞

ローマ人の物語15 (塩野七生)

15年に渡って毎年1冊のペースで書き綴られてきたシリーズがついに完結。このシリーズの偉大さは、キリスト教の理想や、フランス革命の理念や、非戦平和や、民族自決などの近代的なフィルターを一切通さずに、ローマの偉大さを論じきったことにあるのでしょう。それでいて、このシリーズが問いかけるものは驚くほど今日的なものなのです。「多民族・多宗教・多文化が共存できる、合理的な寛容さ」こそ、ローマ以降、私たちの世界が持てないでいるものなのですから・・。


ブログのおかげで、たくさんの素晴らしい本に出会うことができました。来年も、もっといい年にしたいものです。それでは皆様、良いお年をお迎えください。