りぼんの読書ノート

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中原の虹 第1巻/第2巻(浅田次郎)

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浅田さんの大ヒット長編『蒼穹の昴』の続編です。前作では、外冦内乱に苦しみながら滅びようとしている清朝を愛し、自分ひとりで幕引きを行う覚悟の西太后が、わが子のように愛する光緒帝を重責から解き放とうとして起こしたものと「戊戌の政変」を解釈し、政変によって翻弄された人々の姿を、見事に描き出してくれました。

本書では、乾隆帝が隠してしまった王者の証「龍玉」(ドラゴンボールですね)が、ついに姿を現します。龍玉を手に入れたのは、「満州の覇者となれ」との予言を受けた日露戦争後の満州で頭角を現してきた馬賊の長、張作霖。不思議な魅力を持つ張作霖のもとに人々は結集しはじめますが、一方で、この地域では近代化された正規軍を率いる袁世凱が独立割拠の機会を窺っていました。

満州に進出し拠点を占領しはじめた日本軍を交えて、満州の運命が大きく変わろうとしている中で、年老いた西太后はついに死を迎えます。紫禁城の奥深くに監禁されたまま、西太后と同時期に世を去った光緒帝の死の真相や、誰も候補者として予想しなかった溥儀少年を、世継ぎとして指名した西太后の真意に対しても、浅田流の「お涙頂戴」的解釈がされますが、滅びゆくものの美学としてはふさわしい。

この後はいよいよ辛亥革命が起きて、清朝は滅亡するはず。皇帝となった溥儀と、張学良の2人の少年も出会うことがあるのでしょうか。そして数奇な運命に翻弄されて別れ別れになったまま、今や大きく立場が異なってしまった、春雷、春雲(春児)、玲玲の3兄弟妹の運命やいかに!

全4巻のシリーズです。次巻が待たれます。

2007/12