りぼんの読書ノート

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ラッキーワンダーボーイ(D・B・ワイス)

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タイトルの「ラッキーワンダーボーイ」とは、伝説のアーケードゲームです。パックマンドンキーコングの全盛期に少年時代をすごした主人公アダムは、いわば「アメリカン・おたく青年」。

ロサンゼルスの怪しげなエンターテインメント会社にコピーライターとして就職したアダム。当時のアーケードゲームを懐かしんで、それらの特徴やプレイのしかたを集大成した「レトロゲーム・カタログ」という幻の著書を書き始めますが、重要なことを思い出しました。それは「ラッキーワンダーボーイ」というマイナーなゲームのみ、幻の最終ステージを制覇していなかったこと。

そんな中、会社で「ラッキーワンダーボーイ」を映画化しようとする企画が立ち上がります。映画会社が、ゲームを製作した日本人女性アラキから著作権を入手しようとしていると聞いたアダムは、幻の最終ステージに隠された秘密を求めて、恋も仕事も放り投げ、彼女の住む京都へと旅立つのですが・・。

この本を貫いているのは「おたく的感性」です。「最終結果を考えるようであれば、それはおたくではない」と主人公に言わせ、マニアックなアイテムや会話に狂喜させるあたりは、めちゃくちゃ楽しい。ところが本書の主人公は「ゲームおたく」であると同時に、大ヒットゲームを次々と生み出した日本に対する「おたく」でもありました。本書の著者は、実際に日本の小説や映画やマンガを愛しているらしいのです。でも本書に描かれる日本はあまりにもシュールで、終盤の展開には違和感を感じてしまうかな。

とはいえ、人生を示唆するかの如き「ラッキーワンダーボーイ」の最終ステージのプレイが、主人公の人生と一体化して、「人生のリプレイ」を繰り返すかのようなエンディングは、おたく精神が最終的に行き着く境地なのかもしれません。著者の日本理解を不愉快にさえ思わなければ、楽しめる一冊です。もちろん、初期のTVゲームファンも。^^

2007/12