有頂天家族（森見登美彦）

古来より京都という街では、人間と天狗と狸が共存して暮らしていました。本書は、現代の洛中を舞台にして、人間と天狗と狸の三者が三つ巴になって引き起こされる、めちゃくちゃ面白い物語です。

主人公は、下鴨神社の糺ノ森に暮らすタヌキの一族。偉大だった父狸はタヌキ汁にされて食べられてしまい、後に遺された４兄弟は、クソまじめな長男、引きこもりの次男、遊び好きの三男、意気地なしの四男と、みなそれぞれ相当に物足りません。

下鴨家のライバルは、夷川家。どうやら長年に渡る、いわく因縁がありそうです。そこにからむのが、落ちぶれて出町柳に逼塞している天狗の「赤玉先生」や、先生の元弟子ながら、今や勢いのあるクールビューティで半天狗の「弁天」。

下鴨４兄弟はかつては赤玉先生を師と仰いでいて、先生が落ちぶれた今でもお世話をしています。でも老いた先生は弁天に惚れていて、妄執丸出し。そんな弁天は、毎年暮にタヌキ汁を食べるという、狸たちの天敵ともいうべき怪しい倶楽部のメンバーで、いわば下鴨の父親狸のカタキでもあります。

物語は、年末に向けて急展開をしていきます。次の京都狸界の総長（だったかな？）は、誰になるのか。
今年のタヌキ汁の犠牲になってしまうのは、誰なのか。京都の暮を、偽・腐れ大学生や、偽・宝塚風男装の麗人が闊歩し、偽・電気ブランは飲まれ、偽・叡山電車まで走り出します。偽・祇園なんかも登場！

そんな中、父狸の死の真相がついにわかる終章では、家族の絆に、不覚にもホロリとしてしまいました。タヌキ家族なのに・・（笑）。「面白きことは良きことなり！」で、森見さん、絶好調です。＾＾

2007/12