りぼんの読書ノート

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死者の代弁者(オースン・スコット・カード)

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エンダーのゲームの続編ですが、人類の存亡を賭けた異星人バガーとの闘いを運命付けられた少年の成長と葛藤を描いた前作とは、ティストは異なっています。

前作の最終章で、異星人との相互理解の欠如こそが戦争と殺戮を引き起こしたことを知ったエンダーは、「死者の代弁者」として死者を悼みつつ、ただひとり生き残った異星人女王の安住の地を探す決意をするのですが、続編である本書は、その問題に真っ向から向き合います。

あれから3000年。人類はついに第二の知的生命体ピギーに遭遇。かつて人類をすくったエンダーの名は、この時代には異星人に対する「大虐殺者」として伝説的な汚名にまみれています。一方で「死者の代弁者」の名は多くの共感者を得ていて、両者が同一人物であったことなどもはや知る人もいません。

前回のあやまちを繰り返さないよう慎重にピギーとの交流をはかった人類でしたが、彼らを最も愛して、彼らに大きな貢献をしたはずの異生物学者が、2代続けてピギーに惨殺されてしまったのです。はたしてこれは、異星人との相互理解は不可能ということを意味しているのでしょうか。

さてそこでエンダーの登場です。えっ、なぜ3000年後にエンダーが生きているかって? そ・・それは、相対性理論だそうです。光速で宇宙空間を旅していたエンダーの主観的な時間は数十年にすぎないそうですが・・このあたりは深く突っ込まないでください。^^;

異星人との相互理解を果たしつつ、人類と、異星人と、そしてかつての仇敵であったバガーの生き残った女王とも共存できる道を探るエンダーは、まるで救世主のよう。そういえば著者は敬虔なモルモン教徒でした。こう書くと「抹香臭い小説」と思われてしまうかもしれませんが、動と静との違いはあるものの、前作にも増して知的興奮を味わうことのできる一冊です。

2007/12