りぼんの読書ノート

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1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター(五十嵐貴久)

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Deep Purple」の「Smoke on the water」という曲をご存知でしょうか。70年代ハードロックの代表曲ですから、力強いギターのイントロくらいは聞いたことがあるのではないかと思います。

1995年。阪神淡路大震災が起こり、オウム真理教事件が起きた年。40代のシロート主婦たちが、バンドを結成してコンサートに挑みます。動機は人それぞれですが、一言で言うなら、今の生活に満足していないこと。

おとなしい主婦の美恵子は、息子が中学浪人し、家に居づらさを感じています。幼馴染のかおりは、男づきあいも派手だけど、何かを遣り残した感じを持ち、夫の転勤で、はじめて東京に来た雪見は、育児に追われて友達もできません。張り紙を見てメンバーに応募してきた新子は、「元プロ」と言っていますが、色々事情がありそうです。

彼女らの高校時代、女性のバンドはまだ登場していませんでした。最初は乗り気ではなかった美恵子も、学園祭のステージで演奏する男の子に感じていた漠然としたあこがれを思い出し、段々とその気になっていきます。

でも、バンド演奏が簡単にできるわけもありません。マクドナルドの片隅で、割り箸でリズムを刻み、エアーでギターを弾き鳴らし、たまのスタジオ練習でも、なかなか一曲通しで演奏するまで至らない状態。そんな未熟な主婦バンドが、思い切って高校主催のチャリティコンサートへの
出場を申し込むのですが、それは無謀な挑戦に終わってしまうのか?

1985年の奇跡』や『2005年のロケットボーイズ』と同系統の、目的邁進プロジェクトストーリーですが、私はこの作家と相性いいようです。主人公たちの本音ベースの会話と、テンポのいい展開がいいですね。主婦たちが「ロックンロール魂」をぶつけるラストは、ウルウルもの。それと、妻に理解ある夫にもね。

  ジャッ、ジャッ、ジャッ。 ジャ、ジャッジャ、ジャン。
ジャッ、ジャッ、ジャッ。 ジャ、ジャジャーン♪

2007/11