りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

アコーディオンの罪(アニー・プルー)

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冒頭に引用されている言葉が印象的です。「黒人がいなければ、ヨーロッパ系アメリカ人は「白人」ではなかったろう。彼らはただアイルランド人、イタリア人・・その他もろもろであり続けて、階級・民族・性別の闘争を繰り広げていたであろう。」

この本では、イタリアで作られた古いアコーディオンが、100年間に渡ってアメリカ各地を転々としながら、その時々にアコーディオンの持ち主となった、様々な民族出身の家族のドラマが描かれます。舞台となる場所は、シシリーを出発点として、ニューオリンズミシシッピ、テキサス、モントリオール、モンタナ、ミネソタ・・。持ち主となる民族は、イタリア系、ドイツ系、メキシコ系、フランス系、アフリカ系、ポーランド系、アイルランド系、ノルウェー系・・。アコーディオンが奏でる民俗音楽は、その時々の持ち主の出自によって変わっていくのですが、往々にして「不協和音」とならざるを得なかったようです。

まだ、大半の移民が貧しかった時代には少ない仕事を互いに奪い合い、ヨーロッパが戦争に陥った時代には「敵」として扱われる民族もいます。多くの者が豊かになった時代でも、新しくアメリカに移住してくる貧しい人々が、忌み嫌われることに変わりはありません。

言葉の壁にぶつかり、宗教の問題に悩み、失われていく古くからの習慣を惜しみ、アメリカ流の名前への改名を考え、子供の教育費の捻出に苦しむ。そういったことがらは、もちろん軋轢を生み、時には悲劇を起こすこともあるのですが、一方では活力を生み出し続けているのも事実です。それは「移民の国アメリカ」で、今でも続いていることなんですね。新しい問題が次々と起きているのも現実なのですが・・。

2007/11