りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

旧宮殿にて(三雲岳斗)

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ベルさんが紹介してくれた本です。副題に「15世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦」とあるように、ミラノ時代のダ・ヴィンチを主人公としたミステリー。といっても、史実の謎に挑むような「本格歴史ミステリー」ではなく、ここで解かれる謎は、万能のルネサンス人、ダ・ヴィンチならこんなテクニックも駆使できたろうな・・と思われる、ちょっとした謎。

だから、彼の才能や特徴が、随所に現れます。
「消えた肖像画」の謎には、彼が左利きであり楽器も得意としていたこと。
「消えた令嬢」が見えるはずもない景色を描いた謎には、レンズの理論。
「消えた彫像」の謎には、彼が贋作にも通じていたこと。
「消えた遺言書」の謎には、人体解剖図。
「消えた部屋」の謎には、遠近法を利用した「ブルネレスキの鏡」。

ダ・ヴィンチの相棒を務めるのは、ミラノ宰相ルドヴィコ・スフォルツァと、才媛チェチリア。彼女は「白テンを抱く貴婦人」のモデルになった女性で一般にはルドヴィコの愛妾と言われていますが、どうだったのでしょう。

ミラノ時代のダ・ヴィンチは、30代から40代の男盛りで絶世の美男子と言われていた頃ですね。いかにも自信たっぷりで、ちょっと嫌味な物言いは、ホームズっぽい雰囲気。ルネサンス気分に浸れる、楽しい作品でした。^^