りぼんの読書ノート

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ナポレオン千一夜物語(藤本ひとみ)

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スペイン遠征に向かう直前の1808年、絶頂期にある皇帝ナポレオンが、ポーランド人の愛人マリー・ヴァレフスカに、自らの半世を語ります。寝物語の動機というのが、愛人から褒めてもらって自信を取り戻すため、というのが笑っちゃうのですが、物語はよく纏まっています。

コルシカ島の一青年士官にすぎずフランス語にも不自由だったナポレオンが、革命期を生き延びイタリア戦役で軍功をあげたものの、総裁政府に疎まれてエジプト遠征に追いやられ、軍事的には得るもののないままにエジプト脱出。無能な総裁政府に対して無血クーデターを起こし、第一執政となるまでの物語。ただ、ナポレオンの語りの中で、箴言的な言葉がゴチック体になっていて、ビジネス教訓めいた仕立てになっているのは、鼻につきます。

例をあげてみましょうか。
・単純にすれば本質が見えてくる
・逆境の中には必ずチャンスがある
・未来を勝ち取るためには、過去の経験を捨てなければならない
・岐路に立った時、指導者はきっぱりと選択しなければならない
・仕事を頼む時は忙しい人間に頼んだ方がいい
・引き際を心得てこそ、真の男だ

相当、余計な感じです。藤本さん、最近仕事に恵まれていない気がします。救いはタレーランフーシェらが暗躍するクーデターの場面に迫力あったことくらいでしょうか。

ちょっと違うけど、マルクスの『ルイ・ボナパルトのブリューメル18日』を読み返してみたくなりました。「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として。二度目は喜劇として」の名警句で始まる作品です。

2007/11