りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

秀頼、西へ(岡田秀文)

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beckさんのブログで紹介されていた本です。戦国時代を題材にした小説は、既に書き尽くされている感がありますが、加藤廣の『本能寺三部作』や本書など、アイデアは尽きないものだとつくづく感心してしまいます。

淀君・秀頼の母子は、大阪城落城とともに絶命したとされていますが、実は秀頼には「その後」があったとの物語。これだけなら、よくある「歴史上のもしも・・」なのですが、本書は人物がよく描けています。何より、晩年の家康の老獪さというか、権謀術数の深さというか、家康と島津が、互いに相手の手を読みあい、裏をかき合うあたりがおもしろかったですね。

話を急ぎすぎました。既に力を失っている秀頼を単に殺すのではなく、わざと薩摩に追いやり、巨大外様である島津家討伐の名目としたいとの陰謀を、家康が抱きます。実は、その陰謀にはもっと深い意味が潜んでいたのですが・・。その陰謀を察した島津家では、秀頼を迎えたいとする老隠居・義弘と、幕府に討伐名目を与えたくないとする当主・家久との対応が分かれて、互いの手の者が闘いあってしまう始末。

両者の間で翻弄されるのは、父・幸村から秀頼の警護を任された真田大助。大助の若々しさが、本書の魅力の大きな部分です。時代劇というのは、こういう「遊び」が楽しいところですね。そういえば誰かが、時代劇のことを「大人のファンタジー」と言ってました。

2007/11