「世界不思議発見」でおなじみのエジプト考古学者の吉村作治先生が、40年前の学生時代にエジプト遺跡調査に乗り出した時の出来事を小説仕立てで書き著しました。
1960年代。1ドルは360円で、外貨持ち出しは500ドルまで。エジプトなんて遠い遠い夢の国だった時代。お金もなく、言葉もイスラムの風習も知らず、あるのは「夢」だけ。仲間を募ってバイトでお金を貯め、色んな会社に捨て身で乗り込み、タダでオイルタンカーに乗せてもらい、ジープを貸してもらう。こんな無鉄砲な挑戦が、日本のエジプト考古学の曙だったんですね。
吉村先生、小説を書いたのははじめてでしょうか。もちろん「実話」に基づいているので、ド派手な展開はありません。途中でエジプト文化の解説なんかも延々と入ったりしちゃって、小説としての出来栄えはイマイチかな。やったことだって、ドライブしたり、漁船を借りたりして、ピラミッドからアスワンまでの各地の遺跡を、見学してきただけ。エジプトやイスラムの風習だって、今となれば珍しくもない。
でもね、日本のエジプト考古学史上に残る、若き日の大冒険を小説仕立てで書くことによって、少しでも多くの人に伝えたいという、思いは十分に伝わりましたよ。そして事実の持つ重みは、やっぱりおもしろいのです。^^
2006/9