りぼんの読書ノート

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女信長(佐藤賢一)

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フランス史に題材を取った作品が多い佐藤さん。前作の『カポネ』も意外でしたが、今度は『信長』とは! しかも「信長は女だった」という、驚天動地の新解釈!

でも、結構、面白く読めたりして・・。女だからこそ、力任せの白兵戦を好まず、鉄砲を採用した。女だからこそ、男の名誉欲・土地欲を無視して、常備軍を備えた。女だからこそ、欲得ではなく、正邪でものごとを判断しえた。

でも、女性であることを全面に出しすぎです。斉藤道三に処女を捧げ、柴田勝家を色仕掛けで篭絡し、浅井長政を愛人として、明智光秀にはほのかな恋心を抱く。人質になっていた織田家の「綺麗なアネキ」に初恋をしたという家康のことなどは、ほとんどパシリとしてアゴで使いまわす。^^

まぁ、このあたりまでは許せるとしても、長政や光秀に対する仕打ちが、裏切られた女のヒステリーみたいに扱われちゃうのは、どうなのでしょう。それでも彼女の中で、だんだんと両性の特質が矛盾をきたしていき、結局は女性としても男性としても未成熟のままに破綻を迎える・・という辺りは、読むのがちょっと辛くなるくらいに、うまく書けています。

ラストに明かされる本能寺の真相は、意外な結末です。でも、この展開は『傭兵ピエール』のジャンヌ・ダルクの最後と似すぎてますけどね。

2006/9