りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

スコーレNo.4(宮下奈都)

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主人公・麻子の人生の中の4つの時間を「スコーレ(人生の学校)」として切り取った本書は、少女から大人の女性へと変わっていく麻子の成長過程をとってもみずみずしく描いた、素晴らしい小説でした。

華やかな名前と容姿を持つ妹・七葉を愛しく思いながら、コンプレックスを感じてしまう前半の少女時代から、社会人になることにとまどいを感じる後半まで、ひとつひとつの出来事に対する麻子の思いが全て、ストンと心に落ちてくるのです。

不器用な麻子が、たまたま入った会社で仕事に悩みながら、徐々に仕事を好きになっていく道筋は、「仕事と結婚の両立」という迷路に彼女を導きます。「母は何かのために何かをあきらめたのだろうか?」との問いは、迷路から脱出しようとする麻子の足どりを一層重くします。

さりげない会話、さりげない努力、さりげない出来事の積み重ねが麻子を長い迷路から脱出させ、やはり長い迷路にいた、妹・七葉と素直に語り合うエンディングは、ちょっと出来すぎかもしれないけれど、前半の屈折した少女時代があったからこそ、素直に共感できるのです。

あたしと麻子とは、家庭環境も成長過程も職種も出会いも異なるけれど、「この本は、自分の気持ちを書いてくれた」と思えてしまうくらいに共感できた本でした。ほとんど最大級の賛辞なのですが、今この時期に読んだ本だからこそ、そう思えるってことなのかもしれません。こういう本とは、出会うタイミングがあるのでしょう。

2007/8/3読了