りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

凍える牙(乃南アサ)

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この人の本、「読まず嫌い」で読んだことなかったのですが、どうやら別の作家と間違っていたようです(笑)。直木賞を取ったこの作品、高村薫ばりの警察ミステリーなんですね。

なんといっても主人公・音道貴子のキャラがいい。30台バツイチの女刑事。機動捜査隊員である彼女の得意技はバイク。でも決してスーパーウーマンではなく、家庭の問題も抱え、警察という男社会で孤独を感じながらも、せいいっぱい職務を果たそうとする姿に共感を感じます。

彼女は、「オオカミの血をひく犬」による連続咬殺殺人を追いながら、オオカミ犬の孤高さ、気高さに自分と通じるものを感じて惹かれていきます。ラスト、深夜の首都高を舞台に、オオカミ犬をバイクで追走する場面。ほれぼれしちゃいそうです。映像で見てみたいな。

中井貴一のイメージがある「合田警部補」より魅力的かも。彼女を主人公にした作品もすでに数冊出ているようです。続けて読んで見たくなりました。余談ながら、トップに上り詰めた後に「ガラスの天井を越えてしまった」ことを感じる「検屍官ケイ・スカーペッタ」と、一刑事の段階で男社会の壁を感じてしまう貴子。こんなところにも、女性の社会進出面での日米の差を感じてしまいます。

2005/3