りぼんの読書ノート

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死刑判決(スコット・トゥロー)

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さすが、他の追随を許さない法廷ミステリーの第一人者の作品です。ハリソン・フォード主演で映画になった「推定無罪」の作者といえば、わかる人も多いんじゃないかな。久しぶりの作品である「死刑判決」も期待を裏切りませんでした。

死刑執行の直前に真犯人を名乗る男があらわれ、10年前の殺人事件を再審議。再召集された人たちにもそれぞれ10年という歳月が流れていました。当時の新進気鋭の検察官ミュリエルは、この事件をきっかけに出世して今や次期地方検事候補。「犯人」を逮捕した警察官のラリーは、ミュリアルの元カレだったのですが警察を引退して不動産経営で余生をすごそうと計画中。死刑判決を下した判事ジリアンは、その後収賄で受けた刑期を終えて、法曹界と離れて一市民として再出発をはじめたところ。真犯人からの告白を聞いて再審を起こす弁護士アーサーは、かつてエリート美女判事だったジリアンにあこがれていました。

次々と登場する新証言をめぐって法廷で火花を散らす論戦がストーリーの白眉ですが、10年という年月を経て再会する彼らのドラマが素晴らしい。10年という年月の重さが、刑務所で無為に過ごすしかなかった容疑者の10年間と比較されているようです。

推定無罪」で敵役を演じたトーマス・モルト検事や、「立証責任」で主役だったサンディ・ストーン弁護士が端役で登場するのも、ファンにはなつかしいところ。

この本の原題は「Reversible Errors(やり直しできる誤り)」。直接的には「死刑判決」のことを指しているのですが、それぞれの人生における「Reversible Errors」を、やり直そうともがく主人公たちを意外と近い存在に感じてしまいます。

2005/3