りぼんの読書ノート

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星宿海への道(宮本輝)

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久しぶりに宮本輝を読みました。『ドナウの旅人』以来か、『優駿』以来か・・そんなもの。この人の本「感動を押し付ける」ような所が鼻について、ある日突然、読みたくなくなってしまったのです。この本も悪くはないんだけど、設定がちょっとあざといかな。私のストライクゾーンが狭くなってるのでしょうか。

50歳にして突然中国奥地で失踪した兄の秘密を、弟と兄の子を抱えて生きる女性とがたどっていきます。少年の頃に母親を失って養子に来た兄は、どうして「星宿海」と呼ばれる「黄河の源流」に異常な関心を持っていたのか。これが、タイトルにもなっているキーポイント。やがて彼らがたどりついた、瀬戸内の小島からの夜景は、夜空の星と地上の灯が渾然一体となった「星の海」。

「星宿海」とは、地上の命が生まれる場所の象徴であり、「生命の継承」こそが、作者の言いたかったことなのでしょう。兄の子を抱える女性が、偶然「兄の実母のルーツ」と同じ場所に根を下ろすという展開はわざとらしいけど、この作者がこのテーマを書く上では「必須」なんだろうな。

それでも「星の海」のイメージは鮮烈です。宇宙空間にひとりで漂う感覚。現実の「星宿海」には行けそうもないけど、瀬戸内の小島なら、そのうち行ってみたいものです。

2005/3