りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

アフター・ダーク(村上春樹)

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~ん、これは村上春樹さんの新境地なんでしょうか。

『ねじ巻き鳥』や『ワンダーランド』に出てくる優柔不断男。よく批判したものの、個人的には結構好きでした。前作『カフカ』あたりから、主人公がたくましくなってきています。

本書に出てくる男性は、ごくごく普通の明るい青年。相変わらず女性には優しくて、人を傷つけられない「いい人」だけど、以前の作品にあった「わけのわからない悩み」とは無縁っぽいキャラ。村上春樹さん自身が、年を取るとともにたくましくなっているのでしょうか。

その点、女性のほうは昔と変わっていない。個室のベッドで眠り続ける姉と、夜の新宿で一夜を明かす妹。「不思議キャラ」と「たくましいキャラ」が2人に分かれたと思えばいいかな。

でも、ストーリーは謎。というより、ストーリーなさすぎ! 眠り続ける姉は、いつの間にか別世界に連れ去られ、いつの間にか戻ってくる。妹は、深夜のデニーズで、姉の知り合いだった青年と出合う。青年の頼みで、ラブホで男性に殴られた中国人娼婦の通訳をする。中国人娼婦を殴った男性は、普通の生活に戻る。中国に留学する妹に好意を持った青年は、手紙を書く約束をする。う~ん。

あまりにも説明不足で、消化不良です。「ある日突然、世界が変わる衝撃」を、いつまでも期待するわけにはいかないのでしょうか。

2005/2